夏の風物詩が、今年も谷中にやってきます。
東京・谷中にある全生庵で、2026年8月1日(土)から8月31日(月)まで、「幽霊画展」が開催されます。
会場に並ぶのは、落語中興の祖として知られる三遊亭圓朝が収集した幽霊画の数々。伝・円山応挙、河鍋暁斎、柴田是真に加え、責め絵や風俗画で知られる伊藤晴雨など、幕末から近代にかけて活躍した画家たちの作品が公開されます。
普段は見ることのできない貴重なコレクションを鑑賞できるのは、毎年8月の1か月間だけ。
恐ろしさだけでは語れない、妖しく、哀しく、どこか美しい幽霊たちに出会える、夏ならではの特別展です。
三遊亭圓朝が集めた、個性豊かな幽霊たち
三遊亭圓朝は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した落語家です。
「怪談牡丹燈籠」「真景累ヶ淵」「死神」など、現在も語り継がれる数多くの名作を生み出し、落語だけでなく、歌舞伎をはじめとする演芸界にも大きな影響を与えました。
圓朝は怪談を創作する際の参考として、数多くの幽霊画を収集していたといわれています。
全生庵が所蔵するコレクションには、伝・円山応挙をはじめ、柴田是真、菊池容斎、松本楓湖、河鍋暁斎、伊藤晴雨など、幕末から明治、近代にかけて活躍した画家たちの作品が含まれています。
ひと口に幽霊画といっても、その表情や佇まい、描かれ方はさまざまです。恨みや恐怖を感じさせるものだけでなく、悲しみや艶めかしさ、儚さをまとった幽霊も描かれています。
画家ごとに異なる幽霊の表現を見比べられることも、本展の大きな見どころです。
責め絵の画家・伊藤晴雨が描く幽霊
今回公開される作品の画家の一人が、伊藤晴雨です。
伊藤晴雨は、責め絵や風俗画、幽霊画などを手がけ、人間の恐怖や苦痛、官能、情念を独自の視点で描いた画家として知られています。
女性の身体や縄、責めの場面を題材にした作品でも知られていますが、単に刺激的な情景を描くだけではなく、その人物が抱える感情や、場に漂う緊張感、妖しい美しさまで表現していることが特徴です。
幽霊画においても、伊藤晴雨ならではの、生々しさと儚さが入り混じる独特の世界観を感じられます。
恐怖と美、苦痛と官能、生と死。相反するものが同時に存在するような表現は、ほかの画家が描く幽霊とは異なる魅力を放ちます。
幽霊画や怪談が好きな方はもちろん、責め絵や緊縛表現、退廃的な美術に関心のある方にも、ぜひ注目してほしい作品です。
毎年8月だけの特別公開
圓朝ゆかりの幽霊画コレクションは、圓朝の墓所がある全生庵に寄贈され、現在も大切に所蔵されています。
全生庵では、圓朝の命日にあたる「圓朝忌」が行われる8月に合わせ、毎年約30幅の幽霊画を公開しています。
一年のうち、このコレクションを鑑賞できるのは8月の1か月間だけ。谷中の落ち着いた街並みや寺院の静かな空気とともに楽しみたい、夏ならではの催しです。
歴史ある寺院の中で幽霊画と向き合う体験は、美術館やギャラリーでの鑑賞とはひと味違います。
全生庵とは
全生庵は、幕末から明治にかけて活躍した山岡鉄舟によって、明治16年に建立された寺院です。
山岡鉄舟は、江戸城無血開城に向けて西郷隆盛と面会し、その道を開いた人物として知られています。また、剣・禅・書に通じ、無刀流を開いたことでも有名です。
境内には三遊亭圓朝をはじめ、山岡鉄舟とゆかりのある人物の墓所があり、幽霊画のほか、明治・大正期の名筆による観音画なども所蔵されています。
静かな寺院の空間で、長い時間を経て受け継がれてきた幽霊画を鑑賞できることも、本展ならではの魅力です。
開催概要
イベント名
全生庵 幽霊画展
開催期間
2026年8月1日(土)~8月31日(月)
※土日・祝日も開館
開館時間
10:00~17:00
※最終入館16:30
拝観料
500円
会場
全生庵
住所
東京都台東区谷中5-4-7
アクセス
JR・京成電鉄「日暮里駅」から徒歩約10分
東京メトロ千代田線「千駄木駅」団子坂下出口から徒歩約5分
電話番号
03-3821-4715
アクセス案内
https://zenshoan.com/access/
※都合により、開館・閉館時間の変更や当日の入場制限が行われる場合があります。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。
谷中で味わう、妖しく涼しい夏の一日
江戸・明治から近代の画家たちが描いた幽霊画を、三遊亭圓朝ゆかりの寺院で鑑賞できる「幽霊画展」。
中でも、責め絵で知られる伊藤晴雨が描く幽霊は、恐怖や悲しみだけでなく、身体性や情念、妖しい美しさを感じさせます。
怪談や落語、日本画が好きな方はもちろん、緊縛や責め絵、フェティッシュな美術表現に興味がある方にもおすすめしたいイベントです。
暑い夏の日、谷中の街を歩きながら、少し背筋が涼しくなるような幽霊画の世界に触れてみてください。















