BDSMやSMのプレイでは、プレイそのものだけでなく、その後に過ごす時間もとても大切です。
緊張感のあるプレイ、強い刺激、拘束、痛み、支配と服従。そうした非日常的な時間が終わったあと、心と身体をゆっくり日常へ戻していくために行われるのが「アフターケア」です。
アフターケアというと、「抱きしめること」や「優しく声をかけること」を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、実際にはもっと幅広く、その形は人によって異なります。
アフターケアとは?
アフターケア(Aftercare)とは、BDSMやSMなどのプレイが終わったあとに、参加者がお互いの心身の状態を確認し、安心して日常の状態へ戻るためのケアをすることです。
たとえば、
- 水分をとる
- 毛布をかけて身体を温める
- 抱きしめる
- 優しく身体に触れる
- 傷や縄跡などを確認する
- 「大丈夫?」と声をかける
- 静かに隣にいる
- 少し会話をする
などがあります。
激しいプレイでなくても、精神的に強い体験をした場合にはアフターケアが重要になることがあります。
なぜプレイ後に気持ちが揺れるのか
プレイ中は、興奮や緊張、恐怖、痛み、快感など、さまざまな感覚が一気に高まることがあります。
特に支配・服従を伴うプレイでは、普段とは違う自分になったような感覚や、相手に深く身を委ねる感覚を経験することもあります。
しかし、プレイが終われば、その強い状態から急に日常へ戻ることになります。
そのため、人によってはプレイ後に、
「急に寂しくなった」
「なぜか涙が出た」
「気分が落ち込んだ」
「ぼーっとする」
「相手に嫌われていないか不安になった」
と感じることがあります。
これは必ずしも、「プレイが嫌だった」という意味ではありません。楽しく、合意の上で行ったプレイであっても、強い刺激のあとに心身の状態が変化することはあります。
「サブドロップ」「トップドロップ」という言葉
BDSMでは、プレイ後にサブミッシブ側の気分が落ち込んだり、不安定になったりする状態を「サブドロップ(Sub drop)」と呼ぶことがあります。
一方で、ケアが必要なのはサブ側だけとは限りません。
支配する側も、プレイ中は相手の安全を確認しながら強い責任感や緊張感を抱えていることがあります。プレイが終わったあとに、疲労感や罪悪感、虚無感などを覚えることもあり、こうした状態は「トップドロップ(Top drop)」と呼ばれることがあります。
つまり、アフターケアは「ドミナントがサブミッシブをケアするもの」と決めつける必要はありません。
お互いにケアを必要としている場合もあります。
アフターケアは「甘い時間」とは限らない
アフターケアというと、抱きしめたり、キスをしたり、甘い言葉をかけたりするイメージがあります。
もちろん、それを好む人もいます。
しかし、人によってはプレイ直後に触られたくないこともあります。
「少し一人になりたい」
「静かにしたい」
「会話をしたくない」
「シャワーを浴びたい」
「何か食べたい」
という人もいます。
そのため、「アフターケア=必ず抱きしめる」というわけではありません。
大切なのは、その人が安心できる形を知っておくことです。
プレイ前にアフターケアについて話しておく
アフターケアについては、プレイ後になって初めて考えるより、プレイ前に確認しておく方が安心です。
たとえば、
「プレイ後は抱きしめられたい?」
「少し一人になる方が好き?」
「水や甘いものは必要?」
「終わったあと、どんな声をかけてもらうと安心する?」
「翌日にも連絡した方がいい?」
こうしたことを事前に話しておくと、お互いに戸惑いにくくなります。
特に初めてプレイする相手の場合、自分にとって当たり前のアフターケアが、相手にとっても心地よいとは限りません。
だからこそ、「何をするか」だけではなく、「何をしてほしくないか」も確認しておくことが大切です。
翌日の連絡もアフターケアになる
アフターケアは、プレイ直後だけで終わるとは限りません。
数時間後や翌日になってから疲労感や気分の落ち込みが出る人もいます。
そのため、
「昨日は大丈夫だった?」
「身体に痛みは残っていない?」
「気持ちの面で気になることはない?」
と後から確認することも、大切なアフターケアの一つです。
特に強いプレイや初めて行ったプレイの場合、翌日のチェックインによって安心できる人も多いでしょう。
アフターケアは信頼関係をつくる時間
SMでは、ときに相手を縛ったり、命令したり、痛みを与えたりします。
しかし、それは相手を大切にしていないということではありません。
むしろ、強いプレイをするからこそ、「終わったあとにどう向き合うか」が重要になります。
プレイ中に支配と服従の関係にあったとしても、プレイが終われば、一人の人間として相手の状態を確認する。
「楽しかった?」
「嫌だったことはなかった?」
「次はどうしたい?」
そうした会話をする時間も、アフターケアの一部です。
正解は一つではない
アフターケアには決まった形がありません。
抱きしめられたい人もいれば、放っておいてほしい人もいます。
すぐに感想を話したい人もいれば、翌日になってから話したい人もいます。
そして、同じ人であっても、その日のプレイ内容や精神状態によって必要なケアは変わります。
だからこそ大切なのは、
「一般的なアフターケア」をそのまま行うことではなく、その相手が何を必要としているのかを知ること。
アフターケアは単なる「プレイ後のおまけ」ではありません。
刺激的な時間を安全に終わらせ、相手との信頼関係を確かめるための大切な時間です。
プレイが始まる前に安全について話すように、プレイが終わった後についても話しておく。
それもまた、BDSMを安心して楽しむための大切なコミュニケーションなのです。














