179分ずっと不安。A24『ボーはおそれている』が2026年2月28日Netflix配信へ

『ボーはおそれている』ネタバレなし紹介:A24×アリ・アスターが描く“179分の悪夢ロードムービー”

A24作品のなかでも、とびきり奇妙で、とびきり息苦しい——。
『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』で知られるアリ・アスター監督が、ホアキン・フェニックスを主演に迎えて作り上げた長編『ボーはおそれている(Beau Is Afraid)』が、Netflixで配信予定です。

本作は、いわゆる“ホラー映画”の枠に収まりません。コメディにも見えるのに笑い切れず、現実劇にも見えるのに現実ではない気がする。観ているうちに、こちらの感覚までぐらついてくるような、超現実的(シュール)な悲喜劇です。


作品情報

  • タイトル:ボーはおそれている(原題:Beau Is Afraid)
  • 監督・脚本:アリ・アスター
  • 主演:ホアキン・フェニックス
  • 制作/配給:A24
  • 上映時間:179分
  • Netflix配信開始日(日本):2026年2月28日(土) 予定

監督アリ・アスターとは

アリ・アスターは、『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』などで注目された監督で、家族・共同体・儀式・罪悪感といったテーマを、じわじわ不穏に育てていく作風が特徴です。

そして『ボーはおそれている』は、その“怖さ”がさらに変な方向へ増幅した一本。恐怖の正体は幽霊や怪物というより、もっと生活に近い「不安」そのもの。しかもその不安が、ときに笑えるほど誇張され、ときに笑えない痛さで刺してくる。A24らしいジャンル崩しの気味悪さが、179分ずっと続きます。


ネタバレなしあらすじ(多め)

主人公ボーは、とにかく不安を抱えています。外に出るのも怖い。人と目を合わせるのも怖い。何かが起きそうで怖い。何も起きないことすら怖い。
そんな彼にとって、いちばん重くのしかかっているのが「母」の存在です。父の命日に母を訪ねる必要があるのに、ボーの心はそれを拒む。行かなければならない——でも行けない。行くのが怖い。

物語は、ボーの日常が“ある悲劇”をきっかけに崩れていくところから加速します。そこから先に待っているのは、普通の不運やハプニングではありません。超現実的な出来事が連鎖し、ボーの旅は肉体的にも精神的にも消耗していきます。

ボーは「母のもとへ向かう」という、単純な目的を持っているはずなのに、道中で起きる出来事があまりに異常で、目的がどんどん遠ざかっていく。助けを求めても状況は改善しないし、親切に見える人の言動もどこかズレている。
しかもこの世界は、ボーの不安を“理解してくれる”どころか、逆にボーの不安を材料にして、さらに巨大化させていくように見えます。

やがて観客は、ある厄介な感覚に巻き込まれます。
いま目の前で起きていることは現実なのか? それともボーの頭の中の誇張なのか? そもそもボーは被害者なのか、それとも——?

本作が巧妙なのは、答えを簡単に渡さないところです。ボーはたしかに怖がっている。けれど、その怖がり方が常軌を逸していて、同情したい気持ちと、目を背けたい気持ちが同時に生まれる。ホアキン・フェニックスの演技は、まさにその“しんどい弱さ”を真正面から成立させてしまいます。

そして物語が進むほど、「母」と「家族」というテーマが、ただの背景ではなく、ボーの人生そのものを支配している“構造”として立ち上がってきます。ボーは母に会うために進んでいるのに、母に会うほど自分が壊れていくようでもある。だから前に進むのが怖い。けれど立ち止まることも許されない。
この矛盾が、179分のあいだ、形を変えて何度もボーを追い詰めていきます。

要するに本作は、「帰省する話」ではありません。
“母という宇宙”から逃げられない男の、悪夢みたいな人生絵巻です。


こんな人におすすめ

  • A24の作品が好きで、ジャンルの枠からはみ出す映画を求めている人
  • 『ミッドサマー』『ヘレディタリー』の、不穏さ・後味の悪さ・解釈が割れる感じが好きな人
  • ホラーで“びっくり”するより、心理的にじわじわ削られる体験が好きな人
  • 「これは結局なんだったの?」を誰かと語り合うのが好きな人
  • 変な映画、長い映画、情報量で殴ってくる映画が好きな人(本作は179分)

逆に、テンポよくスカッとする映画を探している人には不向きです。これは“快感”より“圧”が勝つタイプの映画。体力がある日に観るのがおすすめです。


まとめ

『ボーはおそれている』は、怖いというより、“不安で息が詰まる” 映画です。
でもその息苦しさが、なぜかクセになる。A24の中でもかなり攻めた一本なので、刺さる人には一生モノ。Netflixで観られるこの機会に、ぜひ“悪夢のフルコース”を体験してみてください。

PRF