【Netflix】なぜ彼は“女性の皮膚”を欲したのか――エド・ゲイン事件と歪んだ母子関係。

皮膚で家具を作った男――エド・ゲイン事件が今なお語られる理由

1950年代のアメリカで起きた数ある凶悪事件の中でも、その異様さと象徴性によって現在まで語り継がれている事件がある。それが、ウィスコンシン州プレインフィールドで発覚したエド・ゲイン事件だ。
彼は大量殺人犯ではない。しかし、その行為は多くの連続殺人犯以上に、人々の記憶に深く刻まれることになった。


表向きは「大人しい隣人」だった男

エド・ゲインは1906年、アメリカ中西部の農村地帯に生まれた。
近所では礼儀正しく、静かで、頼まれれば子どもの世話も引き受ける――そんな「害のない男」として認識されていたという。

だが1957年、地元の雑貨店女性店主が失踪したことをきっかけに、彼の自宅が捜索される。そこで警察が目にしたのは、常識では理解不能な光景だった。


墓荒らしと「人皮の加工品」

ゲインの家から見つかったのは、

  • 女性の皮膚で作られたマスク
  • 人骨や頭蓋骨を用いた家具や装飾品
  • 女性器を保存した箱

といった、人間の遺体を素材にした品々だった。

彼は主に墓地を荒らし、比較的新しい女性の遺体を掘り起こして持ち帰っていたとされる。
この行為は猟奇的好奇心というより、女性になりたいという歪んだ願望の延長線上にあったと、後の精神鑑定で分析されている。


確認された殺人はわずか2件

エド・ゲインは「連続殺人犯」として語られることが多いが、法的に確認された殺人は2件のみだ。
それでもなお彼が“アメリカ史上最悪の怪物”の一人として語られるのは、殺害人数ではなく、死後の身体に対する異常な執着が理由だろう。

死体を「恐怖の対象」ではなく、「素材」や「理想の身体」として扱った点に、当時の人々は言葉を失った。


母親との歪んだ関係性

事件を語るうえで欠かせないのが、母親との異常な関係だ。
母は極端な宗教思想を持ち、女性を「堕落の象徴」として忌み嫌っていた。その価値観のもと、ゲインは外界から切り離されるように育てられた。

母の死後、彼の精神は急速に不安定になったとされる。
「母を失った喪失感」と「女性になりたいという願望」が結びつき、死体を通じて“女性の身体をまとう”行為へと変質していった可能性が指摘されている。


裁判と精神鑑定の結末

逮捕後、ゲインは精神鑑定を受け、統合失調症と診断された。
そのため刑務所ではなく精神病院へ収容され、以後は社会から隔離された生活を送る。1984年、彼は病院で静かにその生涯を終えた。


ホラー映画の原型となった存在

エド・ゲイン事件は、後のホラー作品に計り知れない影響を与えた。
『サイコ』『悪魔のいけにえ』『羊たちの沈黙』など、
「母への執着」「皮膚をまとう殺人者」「孤立した田舎の家」というモチーフは、ほぼゲイン事件を原点としている。

彼は単なる犯罪者ではなく、現代ホラーの雛形そのものだったのだ。


Netflixで再び注目される理由

近年ではNetflixの実録犯罪シリーズやドラマ作品の中で、エド・ゲインをモデルにしたキャラクターや事件背景が繰り返し取り上げられている。
中でも『モンスター:エド・ゲインの物語』では、彼を単なる怪物として描くのではなく、狂気が生まれる過程に焦点が当てられている。

なぜ「普通に見える人間」が怪物になったのか――。
その問いこそが、今なおこの事件が語られ続ける最大の理由なのだろう。


おわりに

エド・ゲイン事件は、残虐性だけを消費するための物語ではない。
そこには、孤立、抑圧、歪んだ愛情、そして社会が見落とした狂気の芽がある。

だからこそ私たちは、この事件を「異常な過去」ではなく、「理解すべき現実」として見つめ続ける必要があるのかもしれない。

PRF